前房型フェイキックIOL手術を受けると角膜内皮細胞が減少するとの記事がありますが、実際のところどうなのか調べてみました。

前房型フェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ)手術で角膜内皮細胞は減少するのか?

強度近視の人間には視力回復手術の選択肢が限られます。 角膜の厚さが足らずレーシック手術は受けることができず、続いて勧められるのがフェイキックIOLなのですが、前房型については角膜内皮細胞が減少することがあるので危険だと書いてあるブログ等もあり心配になります。

私自身、フェイキックIOLを受け、術後は安定していますが心配になる方もいると思うので、ネット上にある情報の根拠について調べてみました。

まず、軽く復習ですが、フェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ)には前房型と後房型があります。これはレンズを入れる位置の違いにより名前が付けられています。角膜と虹彩の間にある前房にレンズを入れる術式を前房型フェイキックIOLと呼び、虹彩と水晶体の間にある後房にレンズを入れる術式を後房型フェイキックIOLと呼びます。前房型フェイキックIOLでは、Artisan(アルチザン)とArtiflex(アルチフレックス)の2種類のレンズが主流であり、後房型フェイキックIOLでは、Staar社(アメリカ)のレンズが主流となっています。

このレンズを入れる箇所により、角膜内皮細胞の減少が起こったり、白内障になることがあります。
このあたりの詳しい話はフェイキックIOLのページで説明しています。

角膜は透明な膜で5層に分かれており、バームクーヘンのような層状の構造をしています。眼の表面から、上皮層、ボーマン膜、実質層、デスメ膜、内皮層に分かれます。角膜内皮細胞はこの角膜の最も内側にある組織で、六角形をした角膜内皮細胞が規則的に配置されています。角膜内皮細胞は角膜の透明度を維持するために必要であり、内皮細胞の密度がある限度を超えて少なくなると角膜にむくみが発生し、角膜の透明性が維持できなくなります。
角膜内皮細胞に近い前房部分にレンズを入れると組織が影響を受け、角膜内皮細胞が減少してしまうのです。ただ、前房型が必ずしも悪いわけではなく、角膜内皮細胞が減少するにも理由があるのです。

角膜内皮細胞が減少することについて、色々なサイトに記載があるのですが、多くの記事は伝聞で根拠についてはっきり書いてありません。今回、出典を明記して角膜内皮細胞減少について、記載されているブログを見つけましたので、内容を確認してみました。(””でくくった部分が引用です)

”今回紹介する論文では、「Artisan フェイキックIOL」という種類の近視矯正用眼内レンズについて、173例308眼という大きな対象を平均3年以上(1~7年)追跡し た結果、少なくとのこのフェイキックIOLにおいては角膜内皮細胞に著名なダメージが認められるという結果を得ています。角膜内皮細胞減少率は、5年間で平均8.3%という大きな数字であり、年令に伴う自然減少を補正してもなお5.3%の減少となります。これは50年で角膜内皮細胞がほぼ半減することを意味し、20才で手術を受けた場合、白内障手術を受ける70才時までには臨床的に大きな問題となるレベルの密度低下が発生することになります。”

出典は、Saxena R et al. Long-term Follow-up of Endothelial Cell Change after Artisan Phakic Intraocular Lens Implantation. Ophthalmology 115: 608-613, 2008 です。
○http://www.ganka.com/topics/080501.htmlより引用

出典を明記していただいているので、原文を確認します。
検索すると、こちらが原文と思われます。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17686520

内容を確認してポイントとなる部分を訳すと、
”Artisan型の眼内レンズ移植者について、前房深度(ACD)と角膜内皮細胞密度(ECD)について相関関係を報告する調査の対象は虹彩に固定するタイプのArtisan型レンズであり、173人の318眼で彼らの前房深度(ACD)は2.89~4.5mm

5年間で平均8.3%の角膜内皮細胞減少が認められ、年令に伴う自然減少を補正してもなお5.3%の減少となる。

前房深度(ACD)と角膜内皮細胞密度(ECD)の間に負の相関関係が明らかになった
患者の年齢、性別、屈折異常、切開サイズは、角膜内皮細胞密度損失との関係は認められなかった。
角膜内皮細胞の基準2,000 cells/mm(2)と前房深度 2.6 mmは見直されるべきだ。”

つまり、今回の調査結果から前房深度(ACD)が浅い人は長期的に角膜内皮細胞が減少することが認められたので、手術の基準を見直すべきだと書いてあります。

今回の調査対象者の手術を受ける際の基準が安全を満たしていなかったのですね。

日本語のブログには前房深度(ACD)についての記載がないので、手術を受けると誰もが劇的に角膜内皮細胞(ECD)が減少するように読めるので、不親切ですね。

全てのクリニックについて知っている訳ではありませんが、私が手術を行ったクリニックでは数年前から前房深度(ACD)が3.0mm以上ないと手術をしていません
前房型のフェイキックIOL手術を検討する場合は、クリニックの先生に前房深度(ACD)と角膜内皮細胞減少の関係について質問すると良いでしょう。答えられない先生はいないはずですし、親切に解答してくれるはずです。

最も、私は以下の理由から前房型より後房型のフェイキックIOL(一般にはICL)をお勧めします。最も大きな理由はICLが厚生労働省の認可を受けたことです。ICLにはICLのリスクがありますが、何かあった際に国のお墨付きをもらっていると安心です。ICL手術を受けて眼に異常が発生した場合、監督官庁である厚生労働省の責任を問うことで、何らかの補償が得られる可能性がありますので。
後房型のフェイキックIOLについては、フェイキックIOLのページで説明していますので、興味があればそちらもご覧ください。

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